診療部門のご案内Departments and Divisions 呼吸器外科

当院の呼吸器外科は、2019年4月1日より呼吸器外科専門医1名が常勤医として赴任したことを受け、正式に独立した診療科としてスタートしました。担当医の呼吸器外科専門医は、当院赴任前は、群馬大学医学部附属病院呼吸器外科に10年以上在籍し、その間、1,300例余りの呼吸器外科手術に術者あるいは指導的助手として携わって参りました。また、当院は、2022年1月より呼吸器外科学会専門医合同委員会専門研修連携施設として認定されております。

 

 

 

 

 

呼吸器外科が扱う疾患としては、原発性肺癌や転移性肺腫瘍などの肺腫瘍、縦隔・胸壁腫瘍および気胸などの良性疾患など多岐にわたります。また、時には胸部外傷患者の診療にもあたります。このうち、我が国におけるがん死亡数の第1位である原発性肺癌に対する手術は、呼吸器外科医が担当する最も重要な領域です。当院では、最新の肺癌診療ガイドラインに準拠し、適応を厳密に定めた上で、積極的に胸腔鏡下手術を導入し、そのほとんどを完全鏡視下で施行しています(ガイドラインは常にアップデートされています)。複数の2~3cm程度の小さな創のみで行う手術であり、従来の開胸手術と比較して低侵襲であることから、患者さんへの負担も軽減され、早期離床にも繋がり、入院期間の短縮にも寄与することが示されています(図参照)。また、一部の早期肺癌や肺機能が低下している患者さんに対しては、術前3D-CT画像の情報をもとに、肺区域切除術も積極的に行っています。区域切除は、手術後の肺機能の温存が図れるため、要件を満たした患者さんにとっては、より恩恵が得られる術式です(図参照)。

 

【肺がんに対する完全胸腔鏡下肺葉切除術の術中創部(1例)】

 

【肺がんに対する完全胸腔鏡下肺葉切除術の手術風景】

 

【左上葉転移性肺腫瘍(複数)に対する上大区切除の3D-CT】

 

 

 

【術中ICG静注による区域間同定 切除予定の上大区のみ緑色の励起発光を認めない】

 

さらに、気胸などの良性疾患や縦隔腫瘍に対しても肺がん同様に積極的に胸腔鏡下手術を導入しております。

 

また、呼吸器外科の立ち上げ時当初から”より安全な医療を提供する”体制を確立する事を最重要課題として取り組んで参りました。その一つとして、術前リハビリテーションを積極的に導入しました。すでに周術期合併症予防のための多職種による周術期外来が、日本においても浸透して来ており、当院でも手術患者さんには入院前からリハビリテーション外来を受診の上、主に呼吸訓練を短期集中的に受けてもらっています(写真)。

 

【術前呼吸リハビリテーションの実際】

 

 

 

 

 

肺がんなどの悪性疾患の治療は、手術のみでなく、放射線治療、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を含めた抗癌剤治療など、集学的治療が必要となる場合も少なくありません。今後も、呼吸器内科専門医と密な連携を取りつつ、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を常に心掛けておりますので、どうぞ安心して当科を受診してください。

 

  2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
原発性肺がん 16 (16) 28 (25) 32 (31) 27 (25) 24 (24)
転移性肺腫瘍 10 (8) 15 (14) 16 (15) 11 (9) 10 (10)
縦隔腫瘍 4 (3) 1 (1) 3 (3) 2 (1) 0
気胸 5 (5) 5 (5) 6 (6) 5 (5) 4 (4)
その他 15 (12) 8 (7) 10 (8) 2 (2) 13 (10)
合 計 50例
(胸腔鏡44例)
57例
(胸腔鏡53例)
67例
(胸腔鏡63例)
47例
(胸腔鏡42例)
51例
(胸腔鏡48例)

医師紹介

  • 茂木 晃

    • 呼吸器外科