診療部門のご案内Departments and Divisions 大腸外科

 当科では、大腸がんを中心に、直腸脱・痔などの良性疾患まで幅広く対応しています。早期がんから進行がんまで、患者さんの状態に応じて、腹腔鏡手術・ロボット支援手術・抗がん剤治療を組み合わせた治療を行っています。

 

目次

 

1. 大腸がんについて

 大腸がんは、日本人に多いがんのひとつで、早期ではほとんど症状がありません。健康診断などでの便潜血検査や内視鏡検査が早期発見に役立ちます。

 

主な症状:
  ・血便
  ・便通異常(便秘・下痢の繰り返し)
  ・腹部膨満感やしこり感
  ・貧血、体重減少

 

 結腸と直腸に分かれ、がんの場所により治療法が異なります。がんの進行度はTNM分類によりステージI~IVに分類されます。

 

2. 治療方針について

 早期がんでは内視鏡的切除(ポリープ切除・EMR・ESD)が可能です。進行がんでは外科的切除が中心となり、必要に応じて術前・術後に化学療法を行います。

 

 当院では、腫瘍の場所、進行度、年齢や併存疾患などを総合的に評価し、患者さんに最適な治療を提案しています。

 

 

3. 大腸がんに対する手術について

 結腸がんでは右半結腸切除、左半結腸切除、S状結腸切除など、がんの部位に応じた切除術を行います。直腸がんでは、肛門温存を目指した低位前方切除術や、必要に応じた人工肛門造設(Miles手術)を行います。

 

 手術ではD3リンパ節郭清(根治性の高い標準手術)を基本としています。

 

 

4. 腹腔鏡下手術について

 当院では、早くから腹腔鏡下手術を導入しており、2021年までに1,300例を超える実績があります。小さな傷から操作することで、術後の痛みが少なく、回復も早くなります。

 

 また、Reduced Port Surgery(孔の数を減らした低侵襲手術)や単孔式手術にも取り組んでいます。

 

 

5. ロボット支援手術について

 直腸がんでは骨盤内の操作が必要となり、繊細で安定した操作が求められます。当院では、da Vinci手術支援ロボットを導入し、神経温存や精密な切除が可能なロボット手術を積極的に行っています。

 

 特に男性や肥満体型の患者さんでも、ロボット手術の利点が発揮されやすいとされています。

 

 

6. 化学療法を併用した治療について

 術後の再発を防ぐ目的で、ステージII~IIIでは抗がん剤治療(術後補助化学療法)を行うことがあります。ステージIVの進行例では、手術に加え、全身化学療法や分子標的薬治療を併用し、長期生存を目指します。

 

7. 良性疾患(直腸脱・痔)について

 大腸外科では、がんだけでなく、直腸脱や痔などの良性疾患の手術も行っています。脱肛や出血、排便障害など、日常生活に支障がある症状に対し、薬物療法・外科治療を適切に選択します。

 

 直腸脱では、腹腔鏡を用いた再建術にも対応しています。

 

 

8. 術後の経過・フォローアップについて

 手術後は、食事の再開、排便のコントロール、ストーマ管理(必要時)などを段階的にサポートします。

 

 退院後は定期的に外来を受診していただき、再発の有無や生活の質の確認、ストーマ指導、必要に応じた化学療法の継続などを行います。

 

 

9. 手術件数について

 当院では、2023年に大腸がんに対する手術を126件行い、そのうち41件がロボット支援手術でした。腹腔鏡下手術は例年80%前後を占めており、全国的にも高水準の低侵襲手術率を維持しています。