診療部門のご案内Departments and Divisions 肝胆膵外科

    当科は、肝臓・胆道・膵臓に発生するがんや良性疾患に対して、専門的かつ高難度な外科治療を提供しています。日本肝胆膵外科学会より「高度技能医修練施設A」に認定されており、全国有数の高難度手術実績を有しています。また、当院は県内で最も早くロボット支援下膵頭十二指腸切除術を導入した施設です。

目次

 

1. 高難度手術と修練施設の認定について   menu

 当院は、日本肝胆膵外科学会より「高度技能医修練施設A」に認定されており、年間90件以上の高難度手術(膵頭十二指腸切除・肝右葉切除など)を安全に実施しています。

 

 術後90日以内死亡率は全国平均より低く、学会監査にも適切に対応しています。

 

2. 対象となる疾患   menu

  ・肝がん(肝細胞がん・転移性肝がん)

  ・胆管がん・胆嚢がん

  ・膵がん・膵嚢胞性腫瘍・膵内分泌腫瘍(NET)

  ・十二指腸乳頭部がん

  ・良性腫瘍(肝血管腫・肝嚢胞など)

 

 

3. 治療方針について   menu

 がんの進行度や全身状態をもとに、根治を目指した外科切除を基本とし、必要に応じて化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療を行います。症例に応じてカンファレンスを行い、最適な治療方針を決定しています。

 

4. ロボット支援下手術について   menu

 当院では、膵頭十二指腸切除術および膵体尾部切除術に対してロボット支援手術を導入しています。da Vinciシステムにより、細かく安定した操作が可能となり、出血の低減、神経温存、低侵襲性の向上が期待されます。ロボット支援手術は、高難度肝胆膵手術における新たな選択肢として注目されています。

 

 

 

 

5. 肝切除術について   menu

 肝臓は再生能力に優れており、がんを含む部分を切除することが可能です。当院では以下のような手術を行っています。

  ・肝区域切除

  ・肝葉切除(右葉・左葉)

  ・拡大肝切除(門脈塞栓術などと併用)

  ・腹腔鏡下肝切除(S5・S6・S3などに対して)

 

術前にはCT・MRI・ICG蛍光画像などを活用し、安全で確実な切除を行っています。

 

ロボット支援下肝亜区域切除以上の肝切除術では、血管処理後にICG蛍光を用いて切除範囲を確認します。蛍光によって切除側と温存側が明瞭に区別され、安全かつ正確な肝切除が可能となります。

 

 

【ICG蛍光で描出された肝臓の境界(切除範囲の確認)】

 

 

【実際の肝離断面(止血・精緻な操作を行っている様子)】

 

 

【切除後に蛍光で温存領域を確認(残すべき肝臓が緑に保たれていることを確認)】

 

 

6. 膵切除術について   menu

 膵がんは早期発見が難しい疾患であり、治療には高い専門性が求められます。当院では以下の手術を行っています

 

  ・膵頭十二指腸切除術(幽門輪温存PPPD)

  ・膵体尾部切除術(脾合併・脾温存)

  ・膵全摘術(必要時)

 

神経叢や血管周囲の郭清など精密な操作を伴うため、経験豊富なスタッフが対応しています。

 

 

ロボット支援下膵切除術では、小さな創部で手術が可能であり、直径2mmの膵管に対しても先端1mmのロボット針子を用いて精密な縫合が行えます。従来の開腹手術と比較して、低侵襲で安全性と正確性を両立できます。

 

 

【(左図:開腹下手術の創部)「大きな正中切開が必要で、創部が大きくなる傾向があります。」】

【(右図:腹腔鏡下手術の創部)「数cmの小切開と複数の小さなポート創で行います。」】

 

 

【(ロボット支援下手術:膵管吻合の様子)「直径2mmの膵管を、先端1mmの針子で縫合可能。繊細な膵管吻合を高精度に行えます。」】

 

  

 

 

「膵体尾部切除術における脾温存手術では、脾動静脈を温存しながら膵のみを切除します。ICG蛍光法を用いることで、脾臓の血流を確認し、確実な温存が可能となります。」

 

 

【脾動静脈を剥離・温存している場面】

 

 

 

【ICG蛍光により脾臓への血流が保たれていることを確認】

 

 

 

【脾臓全体(ICGで緑に描出)、血流が良好に維持されていることを示す】

 

 

 

【総胆管拡張症の手術では、胆管を丁寧に露出し、周囲の血管や臓器を損傷しないように注意深く処理を行います。経験豊富なチームが、安全性を第一に考えて手術を行っています。】

 

 

 

7. 手術件数について   menu

 当院では年間100件を超える肝胆膵手術を行っており、腹腔鏡やロボット支援による低侵襲手術の割合も年々増加しています。以下に手術件数の推移を示します。

 

 

 

8. 術後の経過・フォローアップについて   menu

 手術後は集中管理と栄養管理を行い、できる限り早期にリハビリを開始します。退院後も外来での定期診察により、再発の有無や生活の質(QOL)の評価を行います。必要に応じて化学療法の継続や、在宅医療・緩和ケアとも連携し、安心して療養を続けられるよう支援しています。

 

 

9. 化学療法・集学的治療について   menu

 進行がんに対しては、手術前後にゲムシタビンやS-1、FOLFIRINOXなどの化学療法を行い、治療効果の向上を目指します。胆管がんや膵がんでは、化学療法によって切除可能となる『conversion手術』にも積極的に取り組んでいます。

 

 また、肝転移に対しては、手術と薬物療法を組み合わせることで長期生存を目指した治療戦略を構築しています。