診療部門のご案内Departments and Divisions 食道外科
当科では、食道がんや食道裂孔ヘルニアを中心とした食道疾患に対する外科治療を行っています。
患者さんの状態や病気の進行度に応じて、安全で体への負担が少ない手術方法を選択しています。
- 1. 食道がんについて
─ 食道がんの種類、ステージ分類、症状について解説します。 - 2. 治療方針について
─ ステージに応じた治療選択(内視鏡治療、手術、化学放射線治療の組合せ)をご紹介します。 - 3. 食道がんに対する手術について
─ 胸腔鏡下/開胸手術の違いや適応、手術の流れと合併症リスクについて説明します。 - 4. 腹腔鏡下・胸腔鏡下手術について
─ 当院で導入している低侵襲手術(VATSなど)の特徴と対象疾患について紹介します。 - 5. 食道裂孔ヘルニアの治療について
─ 胸やけ、逆流症状などを呈する食道裂孔ヘルニアに対する手術の適応、腹腔鏡下修復術の流れを解説します。 - 6. 術後の経過・フォローアップについて
─ 合併症管理、食事再開、退院の目安、退院後の生活指導についてまとめています。 - 7. 手術件数について
─ 当科の手術件数についてまとめています。
1. 食道がんについて
食道がんは、食道の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍で、特に中高年の男性に多く見られます。飲酒や喫煙が主なリスク因子とされ、初期は無症状のことも多く、進行してから発見されることがあります。
主な症状:
・食事がしみる・つかえる感じ(嚥下困難)
・胸の痛みや違和感
・体重減少
・声がれ(反回神経麻痺による)
食道がんには、主に扁平上皮がん(中・下部に多い)と腺がん(下部食道に多い)があります。進行度はTNM分類(T:腫瘍の深さ、N:リンパ節転移、M:遠隔転移)でステージ0〜Ⅳに分類されます。
2. 治療方針について
病期や全身状態に応じて、以下の治療を組み合わせて行います:
・内視鏡的治療(EMR・ESD):粘膜内に限局した早期がんが対象
・外科手術:粘膜下層以深のがんに対して、食道切除とリンパ節郭清を行う
・化学放射線療法(CRT):手術が困難な場合や術前・術後補助療法として使用
・当院では週1回の術前カンファレンスで、多職種による治療方針を検討しています。
3. 食道がんに対する手術について
がんの位置や進行度に応じて、胸部・腹部のアプローチを組み合わせた食道切除術を行います。
・開胸・開腹手術:視野が広いが、侵襲が大きく合併症リスクも高い
・胸腔鏡・腹腔鏡下手術:低侵襲で術後回復が早い
再建方法には、胃を用いた胃管再建が一般的で、結腸や小腸を使うこともあります。術後の肺炎、縫合不全、声帯麻痺などの合併症管理に努めています。
4. 腹腔鏡下・胸腔鏡下手術について
当院では、低侵襲で回復の早い鏡視下手術を積極的に導入しています。
特徴: ・術後の痛みが少ない ・出血が少なく、整容性にも優れる ・肺炎などの合併症リスクが軽減される可能性
対象は早期〜中等度進行例が中心で、手術難易度や癒着状況により開胸へ移行することもあります。
・内視鏡的治療(EMR・ESD):粘膜内に限局した早期がんが対象
・外科手術:粘膜下層以深のがんに対して、食道切除とリンパ節郭清を行う
・化学放射線療法(CRT):手術が困難な場合や術前・術後補助療法として使用
・当院では週1回の術前カンファレンスで、多職種による治療方針を検討しています。
5. 食道裂孔ヘルニアの治療について
横隔膜の裂け目から胃が胸腔内に逸脱する状態で、逆流性食道炎や胸やけの原因となります。
軽症は内服治療で対応可能ですが、薬で改善しない場合や高度なヘルニアでは手術を行います。
腹腔鏡で裂孔を縫縮し、逆流防止の噴門形成術を追加します。
6. 術後の経過・フォローアップについて
術後は呼吸リハビリや栄養管理を行い、体力と生活の質の回復を目指します。退院後も定期的な外来受診と検査で、再発や栄養状態を確認します。
注意点:
・ゲップが出にくい
・食後の膨満感やつかえ感が出ることも
・退院後も少量ずつ、ゆっくりとした食事を心がけていただきます
NSTや緩和ケア、ソーシャルワーカーなど多職種によるサポート体制も整えています。
7. 手術件数について
当院では、年間約10例の食道がん手術を行っており、そのうち半数以上が腹腔鏡下で実施されています。安全で確実な切除に努めています。