診療部門のご案内Departments and Divisions 食道外科

当科では、食道がん食道裂孔ヘルニアを中心とした食道疾患に対する外科治療を行っています。
患者さんの状態や病気の進行度に応じて、安全で体への負担が少ない手術方法を選択しています。

 

1. 食道がんについて   menu

・食道がんとは
 食道がんは、食べ物の通り道である食道の内側の粘膜から発生するがんです。食道は、のどと胃をつなぐ細長い臓器で、胸の中央を通っています。日本では中高年の男性に多く、飲酒や喫煙が大きなリスク因子とされています。初期には症状が出にくいこともあり、進行してから発見される場合もあります。

 
・このような症状に注意が必要です
  食道がんでは、次のような症状が出ることがあります。
  熱いものや刺激物がしみる
  食べ物がつかえる感じがする
  飲み込みにくい
  胸の奥に痛みや違和感がある
  食事量が減り、体重が減ってきた
  声がかすれる
これらの症状があるからといって、必ず食道がんというわけではありません。しかし、症状が続く場合には、胃カメラなどの検査で食道の状態を確認することが大切です。

 

・食道がんの主なタイプ
 食道がんには、大きく分けて「扁平上皮がん」と「腺がん」があります。
日本で多いのは扁平上皮がんで、飲酒や喫煙との関連が強いとされています。主に胸の中の食道に発生します。
腺がんは、胃に近い下部食道に発生しやすいタイプで、胃酸の逆流などが関係することがあります。

 
・病気の進行度と治療方針
 食道がんの進行度は、がんが食道の壁のどこまで深く入り込んでいるか、リンパ節に転移があるか、ほかの臓器に転移があるかによって決まります。
この進行度はステージ0からステージIVまでに分類されます。早期であれば内視鏡治療が可能なこともありますが、進行度によっては手術、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせて治療を行います。
当院では、がんの進行度だけでなく、患者さんの全身状態や生活背景も踏まえながら、最適な治療方針を検討しています。

 

 

2. 治療方針について   menu

 食道がんの治療は、がんの進行度、リンパ節転移の有無、患者さんの全身状態やご希望に応じて決定します。内視鏡治療、手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせながら、一人ひとりに適した治療方針を検討します。

 
・早期がんに対する内視鏡治療
がんが粘膜内にとどまる早期の段階では、EMRやESDといった内視鏡治療で切除できる場合があります。食道を温存でき、体への負担が比較的少ない治療です。

 
・進行がんに対する外科手術
がんが粘膜下層より深く進んでいる場合や、リンパ節転移のリスクがある場合には、食道切除とリンパ節郭清を行います。必要に応じて、胸腔鏡手術など低侵襲手術も取り入れています。

 
・化学療法・放射線療法
進行した食道がんでは、手術の前に抗がん剤治療を行う術前補助化学療法が選択されることがあります。また、手術が難しい場合や手術を希望されない場合には、化学放射線療法を検討します。

 
・チームで決める治療方針
当院では、週1回の術前カンファレンスを行い、複数の診療科と多職種で治療方針を検討しています。最新の治療ガイドラインに基づき、患者さんの病状、体力、生活背景を踏まえた最適な治療を提案します。

 

3. 食道がんに対する手術について   menu

・食道がんに対する手術について
食道がんの手術では、がんを含む食道を切除し、周囲のリンパ節を取り除きます。その後、胃などを使って食べ物の通り道を再建します。
食道は胸の奥深くにあり、心臓・大動脈・肺・気管などの重要な臓器に囲まれています。そのため、食道がん手術は専門性の高い手術であり、がんの位置や進行度、患者さんの全身状態に応じて、胸部・腹部・頸部の操作を組み合わせて行います。

 
・体への負担を抑えた手術
従来の開胸・開腹手術は、広い視野で手術を行える一方、体への負担が大きくなることがあります。
当院では、患者さんの状態に応じて、胸腔鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。小さな創からカメラと器具を挿入し、拡大された鮮明な視野で手術を行うことで、術後の痛みの軽減や早期回復が期待できます。

 
・胃管再建を中心とした再建方法
食道を切除した後は、食べ物の通り道を作り直します。多くの場合、胃を細長く形成した胃管を用いて再建します。患者さんの状態によっては、結腸や小腸を用いることもあります。

 
・術後合併症への対応
食道がん手術後には、肺炎、縫合不全、反回神経麻痺などの合併症が起こることがあります。当院では、術後の呼吸リハビリ、栄養管理、早期離床、多職種によるサポートを行い、合併症の予防と早期対応に努めています。
根治性を大切にしながら、できるだけ体への負担を抑え、患者さんが安心して治療を受けられる手術を目指しています。

 

 

4. 腹腔鏡下・胸腔鏡下手術について   menu

1. 傷が小さく、体への負担が少ない
従来の開胸手術では、肋骨の間を大きく開いて手術を行う必要がありました。胸腔鏡手術では、小さな創で手術を行うため、術後の痛みが軽減されやすく、呼吸機能への影響も少なくなることが期待されます。

 
2. 拡大視効果により、精密な手術が可能
胸腔鏡では、手術部位を高精細なカメラで拡大して確認できます。食道周囲の血管、神経、リンパ節などを細かく観察しながら操作できるため、より繊細な剥離やリンパ節郭清が可能になります。

 
3. 術後の回復が早いことが期待される
体への負担が少ないことで、術後の離床や呼吸訓練を早期に進めやすくなります。肺炎などの術後合併症の予防にもつながる可能性があります。当院では術後在院期間は約3週間です。

 
4. 根治性と低侵襲性の両立を目指す
食道がん手術で最も大切なのは、がんをしっかり取り切ることです。当院では、がんの進行度、全身状態、心肺機能などを総合的に評価し、根治性を保ちながら、できるだけ体への負担を抑えた手術を目指しています。

 

 

 

5. 食道裂孔ヘルニアの治療について   menu

・食道裂孔ヘルニアは、横隔膜にある食道の通り道「食道裂孔」がゆるみ、胃の一部が縦隔内へ脱出する病気です。胃と食道の境目がずれることで胃酸が逆流しやすくなり、胸やけ、呑酸、食後のつかえ感、咳やのどの違和感などの原因となります。

 
・軽症の場合は、胃酸を抑える薬や生活習慣の改善で症状をコントロールします。一方で、薬で十分に改善しない場合や、胃の脱出が大きい高度なヘルニアでは、手術を検討します。

 
・手術では、腹腔鏡を用いて脱出した胃を本来の位置に戻し、ゆるんだ食道裂孔を縫い縮めます。さらに、逆流を防ぐために噴門形成術を行い、胃酸が食道へ逆流しにくい形に整えます。

 

 

 

 

6. 術後の経過・フォローアップについて   menu

 食道がんの術後は、再発の確認だけでなく、体力の回復、栄養状態の改善、食事や日常生活への適応を含めた継続的なフォローが重要です。

 
・呼吸リハビリと早期離床
術後は肺炎などの合併症を予防するため、早期から呼吸リハビリテーションや離床訓練を行います。リハビリ専門職と連携しながら、無理のない範囲で少しずつ活動量を増やし、体力の回復を目指します。

 
・栄養状態のサポート
食道がん手術後は、一度に食べられる量が減ったり、体重が減少したりすることがあります。当院ではNST(栄養サポートチーム)と連携し、患者さんの状態に合わせて食事内容や栄養補助の方法を検討します。

 
・退院後の定期的な外来フォロー
退院後も、定期的な外来診察、血液検査、画像検査、内視鏡検査などを行い、再発の有無や栄養状態を確認します。また、食事のとり方、体重の変化、飲み込みにくさ、生活上の不安などについても、必要に応じてサポートしていきます。

 
・多職種による支援
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、NST、薬剤師、ソーシャルワーカーなどが連携し、入院中から退院後まで患者さんを支えます。
患者さんが安心して日常生活に戻れるよう、当院では多職種による切れ目のないフォローアップ体制を整えています。

 

 

 

7. 手術件数について   menu

 当院では、食道がんに対する手術のほぼ全例を胸腔鏡下に実施しています。食道がん手術は消化器外科領域の中でも特に高難度の手術ですが、当科では術前カンファレンスによる十分な検討のもと、安全で確実な切除を心がけています。
これまでの食道がん手術において、幸いなことに手術関連死亡症例は認めていません。今後も、低侵襲性・根治性・安全性のバランスを大切にしながら、質の高い食道がん治療を提供してまいります。